中小・小規模事業者の採用の始め方 完全ガイド 2026
Editorial / 労務・採用

中小・小規模事業者の採用の始め方 完全ガイド 2026

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【重要】 本記事は2026年6月時点の情報をもとに編集者が整理した一般情報です。法令・助成金・最低賃金は改正や年度更新が頻繁なため、必ず最新の公的情報をご確認ください。個別の判断は社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

この記事の位置づけ(採用活動の入り口)

この記事は「どうやって募集して人を採るか」、つまり採用活動そのものを扱います。求人媒体の選び方、ハローワークの使い方、採用代行や派遣の使い分け、求人票の法的注意までをまとめました。

人を採ると決めたあとの手続き、たとえば雇用契約書の作成、社会保険・雇用保険の加入、源泉徴収といった入社後の事務は、別記事の初めての採用・雇用手続きガイドで詳しく解説しています。本記事の最後でも改めて案内します。まずは「募集して、選んで、内定を出す」までを順番に見ていきます。

2026年の採用環境を数字で押さえる

採用を始める前に、いまの市場感を数字で確認しておきます。厚生労働省の「一般職業紹介状況」によると、有効求人倍率(季節調整値)は令和8年(2026年)4月分で1.18倍、令和7年度の平均は1.20倍でした(令和8年5月公表分、速報値を含みます)。

有効求人倍率は「求職者1人あたり何件の求人があるか」を示す指標です。1倍を超えると求人のほうが多い、つまり企業から見て人が採りにくい状態を意味します。1.1〜1.2倍前後で推移しているということは、応募が自然に集まりにくい環境が続いているということです。

小規模事業者にとって意味するのはシンプルです。求人を出して待つだけでは応募が来にくくなっています。媒体選びと求人票の書き方で「見られる・応募される」確率を上げる工夫が、以前より重要になっています。

採用にかかる人件費を先に試算する

媒体を選ぶ前に、その人を採ったら毎月いくらかかるのかを把握しておくと予算を組みやすくなります。給与は「額面(月給)」だけでは終わりません。会社は社会保険料の半分(会社負担分)や労働保険料も負担します。月給の額面に対して、会社の実質的な月コストはおおむね1.1〜1.2倍程度になります。

当サイトの給与シミュレーターを使うと、月給を入れるだけで本人の手取り、会社負担額、会社から見た月あたりの人件費が試算できます。たとえば月給25万円で採用した場合に会社の月コストがいくらになるかを先に把握しておけば、求人媒体にかける予算や、紹介手数料を払えるかどうかの判断がしやすくなります。採用予算は「媒体費+入社後の人件費」で考えるのが現実的です。

採用手法8種を費用構造で比較する

採用の手段は大きく8種類に整理できます。それぞれ「お金のかかり方(費用構造)」が違うので、自社の予算と急ぎ具合で選び分けます。具体的な金額は媒体・プラン・職種で大きく変わるため、ここでは費用の「型」で比べます。

費用がほぼかからないのはハローワーク・リファラル(社員紹介)・SNS採用です。掲載するだけで料金が発生するのが求人媒体(掲載課金)、クリックされた分だけ課金されるのが求人検索エンジンの有料枠、採用が決まって初めて費用が発生するのが人材紹介(成功報酬型)です。派遣は雇用そのものを外部に置く形、採用代行は採用業務を外注する形になります。

採用手法8種の費用構造と小規模事業者への向き不向き
手法費用構造目安小規模での使いどころ
ハローワーク無料(国の公共サービス)0円まず最初に出す。費用ゼロで地域の求職者に届く
求人サイト・媒体(リクナビNEXT|マイナビ転職|doda|en 等)掲載課金(成果に関わらず掲載料がかかる)媒体・プランによる応募を急ぐ・露出を増やしたいとき。応募ゼロでも掲載料は戻らない点に注意
求人検索エンジン・アグリゲーター(Indeed|求人ボックス|スタンバイ)無料掲載枠+クリック課金の有料オプション無料枠あり|有料は変動無料枠で試し、効果を見て有料枠を足せる。小規模と相性が良い
人材紹介(エージェント)成功報酬型一般的に理論年収の30〜35%程度(職種による)専門職や急ぎの採用。決まるまで費用は発生しない
人材派遣派遣会社へ時間単価の派遣料金時間単価×稼働一時的な業務量増。雇用責任は派遣元にある
採用代行(RPO)業務委託費(月額または従量)契約による採用に割く時間・ノウハウがないとき。業務を外注する
リファラル(社員紹介)ほぼ無料ほぼ0円(必要なら紹介手当)既存社員のつてを使う。定着しやすい傾向がある
SNS採用ほぼ無料(運用工数)ほぼ0円発信を続けられる体制があれば。即効性は低い

自社で選べないときは無料の比較・紹介サービスを使う

採用手法が8種類あると分かっても、自社にどれが合うのか、どの媒体に出せば応募が来るのかは、初めての採用では判断が難しいものです。これは小規模事業者でよくあるつまずきです。媒体ごとの強みや料金体系を一から調べるには時間がかかりますし、選び方を間違えると掲載料だけ払って応募ゼロということも起こります。

こうした場合に、求人媒体や採用代行・派遣会社を無料で比較・紹介してくれるサービスがあります。自社で一から調べる代わりに、複数の選択肢を見比べる材料として使えます。いずれも比較・問い合わせは無料で、実際に契約するかどうかは任意です。次のセクションで具体的なサービスを紹介します。

ハローワークの使い方(無料で始める基本)

費用をかけずに採用を始めるなら、まずハローワークです。求人の申込みは無料で、国の公共職業安定機関を通じて地域の求職者に求人を届けられます。

申込みは、窓口に持参する方法のほか、インターネット上の「求人者マイページ」からオンラインで行う方法があります。事業所の情報を登録し、求人を申し込むと、ハローワークが内容を確認して受理し、求人が公開されます。求人の有効期限は原則として申込んだ月の翌々月末までです。期限が来たら更新の手続きをします。

ハローワーク経由の採用は、後述する一部の助成金(特定求職者雇用開発助成金など)の要件に関わることがあります。助成金を視野に入れるなら、ハローワークの紹介で採用するルートを押さえておくと選択肢が広がります。

ハローワーク求人申込みから採用までの流れ
順序手続きポイント
1事業所情報の登録窓口または求人者マイページで登録
2求人の申込み募集職種・条件・明示事項を入力
3窓口での確認・受理内容に問題がなければ受理される
4求人の公開有効期限は原則として翌々月末まで
5応募・選考書類選考・面接を行う
6採用・労働条件の通知労働条件通知書を交付する

媒体・紹介・派遣・採用代行の使い分け

無料のハローワークと求人検索エンジンの無料枠を起点にしつつ、状況に応じて有料の手段を足していくのが基本です。判断軸は「急ぎか」「専門性が高いか」「一時的な人手か」「採用に割く時間があるか」の4つです。

応募を早く集めたい・露出を増やしたいなら掲載課金の求人媒体。専門職やマネジメント層など、自社のつてや無料枠では集まりにくい人材なら成功報酬型の人材紹介。繁忙期だけ・特定業務だけ人手が欲しいなら人材派遣。採用活動に割く時間そのものがないなら採用代行(RPO)、という整理になります。

特に混同しやすいのが人材紹介・人材派遣・採用代行の3つです。下の表で「誰が雇うのか」「いつ費用が発生するのか」を確認してください。

人材紹介・人材派遣・採用代行の違い
項目人材紹介人材派遣採用代行(RPO)
雇用するのは自社(直接雇用)派遣元(派遣会社)自社(直接雇用)
費用発生のタイミング採用が決まったとき(成功報酬)稼働した時間に応じて契約期間中(月額または従量)
費用の型理論年収の30〜35%程度(職種による)時間単価×稼働時間業務委託費
向いている場面専門職・急ぎの直接採用一時的・特定業務の人手採用業務を外注したいとき

求人票・募集時の法的注意(2024年改正を含む)

求人票には守るべきルールがあります。知らずに書くと法令違反になったり、応募者とのトラブルにつながったりします。ここが小規模事業者の見落としやすいポイントです。

2024年4月1日施行の明示ルール改正は2系統あります。場面が違うので分けて理解してください。

募集・求人を出す時点で必要なのが職業安定法のルール、実際に労働契約を結ぶ・更新する時点で必要なのが労働基準法のルールです。「業務の変更の範囲」と「就業場所の変更の範囲」は、雇入れ直後の業務・場所だけでなく、将来の配置転換などで変わりうる範囲まで含めて示します。たとえば当面は本店勤務でも、将来的に支店勤務の可能性があるなら、その範囲を書いておく必要があります。

2024年4月改正 明示事項の追加(2系統)
場面根拠法追加された主な明示事項
募集・求人申込みの時点職業安定法業務の変更の範囲|就業場所の変更の範囲|有期契約の更新基準(通算契約期間・更新回数の上限を含む)
労働契約の締結・更新の時点労働基準法就業場所・業務の変更の範囲|更新上限の有無と内容|無期転換申込機会・無期転換後の労働条件

年齢・性別・賃金・固定残業代の注意点

明示事項のほかに、求人票で守るべき差別禁止と賃金のルールがあります。

年齢制限は原則禁止です(労働施策総合推進法)。「35歳まで」のように年齢で募集を絞ることは原則できません。例外は施行規則で限定的に列挙されており、定年を上限とする無期雇用、長期キャリア形成を図るための若年者(無期雇用)、特定の年齢層が著しく少ない場合などに限られます。

性別を理由とする差別も禁止です(男女雇用機会均等法5条)。「営業マン募集」のような性別を限定する表現は避けます。また、業務上の必要がないのに身長・体重・体力などを要件にすると、結果的に一方の性を不利にする間接差別になりうる点にも注意します。

賃金は最低賃金以上にします。令和7年度の地域別最低賃金は全国加重平均で1,121円ですが、発効日は都道府県によって2025年10月から2026年3月まで差があります。自分の都道府県の最新額を必ず確認してください。

固定残業代(みなし残業代)を載せるなら、次の3点を明示します。

①基本給の額|②固定残業代の時間数と金額の計算方法|③固定残業時間を超えた分は追加で割増賃金を支払う旨

この3点が書かれていないと、固定残業代として認められず、別途残業代を請求されるリスクがあります。

採用に使える助成金(申請前に最新の要領を確認)

採用にあわせて使える助成金があります。ただし金額や要件は年度ごとの公募要領で頻繁に改正されます。ここでの内容は概要です。申請を考えるなら、必ず申請時点の最新の公募要領と、管轄の労働局・ハローワークで条件を確認してください。

キャリアアップ助成金(正社員化コース)は、有期雇用などの労働者を正社員化したときに支給される助成金です。令和7年度の例では、有期から正社員化で1人あたり最大80万円などの区分があり、賃金を3%以上増額することなどが要件とされています。

特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)は、高年齢者・障害者・母子家庭の母などの就職が困難な方を、ハローワークなどの紹介で継続して雇用する事業主に支給されます。前述のとおりハローワーク経由の採用が要件に関わるため、対象者の採用を考えるなら申込みルートに注意します。

なお、人手不足を背景に外国人を雇用するニーズも高まっています。ただし在留資格の確認など事前に押さえるべき事項が多いため、外国人の採用を検討する場合は、専門の窓口で個別に確認することをおすすめします(本記事では概要にとどめます)。

採用の基本フローと入社手続きへの接続

最後に、採用の全体像を流れで整理します。募集計画を立て、媒体を選び、求人票を作り(明示事項と固定残業代に注意)、応募に対応し、書類選考・面接を行い、内定を出し、労働条件を通知(2024年改正の追加事項を反映)、そして入社手続きへ進みます。

内定を出してからが、社会保険・雇用保険・税の手続きという別の山場です。雇用契約書の作成、社会保険と雇用保険への加入、源泉徴収や住民税の設定、36協定や就業規則の整備など、入社後にやるべきことは多くあります。

この入社後の手続きは初めての採用・雇用手続きガイドに詳しくまとめています。残業をさせるなら36協定、従業員が増えてきたら就業規則、パート・アルバイトを採るなら社会保険の適用拡大もあわせて確認してください。雇わずに業務を外注する選択肢を検討するなら業務委託と雇用の違いも参考になります。

もう一つ忘れがちなのが「採った後に辞めさせない」準備です。小規模の会社は1人の退職のダメージが大きく、採用コストが一瞬で消えます。不満や困りごとを早期に拾う仕組みも、採用とセットで考えておく価値があります。

採用に関するよくある質問(FAQ)

Q. 採用は何から始めればいいですか?

まずは費用がかからないハローワークと、求人検索エンジン(Indeed・求人ボックスなど)の無料掲載枠から始めると予算を抑えやすくなります。ここで応募の集まり具合を見て、足りなければ掲載課金の求人媒体や人材紹介を足していく順番が、無駄な費用を抑えやすい進め方です。採用する人の月コストは給与シミュレーターで先に試算しておくと予算を組みやすくなります。

Q. ハローワークの求人は本当に無料ですか?

はい、ハローワーク(公共職業安定所)への求人申込みは無料です。国の公共サービスのため掲載料はかかりません。窓口で申し込むほか、インターネットの「求人者マイページ」からオンラインで申し込めます。求人の有効期限は原則として申込んだ月の翌々月末までで、期限が来たら更新します。

Q. 人材紹介と人材派遣は何が違いますか?

人材紹介は、紹介された人を自社が直接雇用する仕組みで、採用が決まったときに成功報酬(一般的に理論年収の30〜35%程度、職種による)を支払います。人材派遣は、派遣会社に雇用されている人に自社で働いてもらう仕組みで、雇用責任は派遣元にあり、稼働した時間に応じた派遣料金を払います。直接雇用したいなら紹介、一時的な人手なら派遣が向きます。

Q. 採用代行(RPO)とは何ですか?

採用代行(RPO)は、求人票の作成や応募者対応、面接の日程調整といった採用業務を外部の専門会社に委託する仕組みです。費用は業務委託費(月額または従量)で発生します。雇用するのは自社のままで、あくまで採用にかかる手間を外注する点が人材紹介や派遣と異なります。採用に割く時間やノウハウが足りないときの選択肢です。

Q. 2024年の改正で求人の書き方は何が変わりましたか?

明示すべき事項が2系統で増えました。募集を出す時点(職業安定法)では「業務の変更の範囲」「就業場所の変更の範囲」「有期契約の更新基準」を示す必要があります。あわせて契約する時点(労働基準法)でも「就業場所・業務の変更の範囲」「更新上限の有無と内容」「無期転換に関する事項」を明示します。募集時と契約時で場面が分かれている点に注意してください。

Q. 求人票で年齢や性別を指定してもいいですか?

原則として、年齢制限も性別による差別も禁止です。年齢制限は労働施策総合推進法で原則禁止とされ、定年を上限とする無期雇用や長期キャリア形成のための若年者採用など、限定列挙された例外に限られます。性別は男女雇用機会均等法5条で差別が禁止されており、業務上の必要がない身長・体重・体力などの要件は間接差別になりうるため避けます。

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参考資料・公的一次ソース