特定商取引法に基づく表記の書き方|個人事業主の完全ガイド 2026
Editorial / 登記・会社設立

特定商取引法に基づく表記の書き方|個人事業主の完全ガイド 2026

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【ご注意】 本記事は2026年5月時点の特定商取引法および関連政省令・ガイドラインに基づく一般的な解説です。個別の事業形態によっては追加の表示義務(例:金融商品取引法、薬機法等)があり、また法令・ガイドラインは随時改正されます。実装前に消費者庁の最新公表資料を必ず確認し、判断に迷う論点は弁護士・行政書士に相談してください。

① 特商法とは|どんな事業に必要か

特定商取引法(特商法)は、訪問販売・通信販売・電話勧誘販売など、消費者トラブルが起きやすい取引類型を対象に、事業者の義務と消費者救済のルールを定めた法律です。訪問販売や電話勧誘販売にはクーリング・オフ(無条件解除権)の制度がありますが、通信販売はクーリング・オフの対象外で、別途「法定返品制度(特商法第15条の3)」が用意されています。Web経由で商品・サービスを販売する個人事業主・小規模法人が必ず関わるのが、この「通信販売」の規定です。

通信販売とは、郵便・電話・インターネット等の手段で申込を受け、商品や役務を販売する取引を指します。次のような事業はすべて通信販売に該当し、特定商取引法に基づく表記の掲載義務が生じます。

  • 物販EC(自社サイト、BASE・STORES・Shopify等のカート利用)
  • オンライン講座・コーチング・コンサルティングの販売
  • 動画教材・テンプレート・電子書籍などのデジタルダウンロード販売
  • SaaS・月額サブスク・有料コミュニティ
  • note有料記事・Brain・Udemy等のプラットフォーム外で行う追加販売

BtoB取引のみを行う場合でも、申込フォームに事業者確認のチェック手段がなければ消費者契約として扱われる可能性があります。「うちは法人向けだから関係ない」と切り捨てず、最初から表記を備えておいたほうが後で剥がす手間がありません。

表示義務に違反した場合、消費者庁または都道府県知事から業務改善指示・業務停止命令・業務禁止命令が出される可能性があり、これに違反すると個人は3年以下の懲役又は300万円以下の罰金(併科可)、法人は両罰規定により業務停止命令違反等(第70条第3号)の場合は最大3億円以下、不実告知・重要事項不告知・威迫困惑・電子メール広告不実表示等(第70条第1号・第2号)の場合は最大1億円以下の罰金(特商法第74条)等の刑事罰が定められています。ただし、小規模事業者にとって現実的な痛手は罰金よりも先に来ます。行政指導が入った時点でモール出店停止・決済代行アカウント凍結・SNSでの炎上が連鎖しがちで、事業そのものが回らなくなるほうが致命的です。開業直後に最低限を整えておけば、この入口で詰まらずに済みます。

② 必須記載11項目の一覧

通信販売事業者が「特定商取引法に基づく表記」として掲載すべき項目を、消費者庁ガイドラインに基づき整理すると以下になります。

No.項目記載のポイント
1販売事業者名法人なら登記上の商号、個人事業主なら住民票上の氏名(屋号のみは不可)
2運営統括責任者実務責任者の氏名。法人は代表取締役名と一致させるのが一般的、個人事業主は「事業主本人」(販売事業者と同名)でよい
3所在地登記住所または事業所住所。請求時開示を採用するなら明記
4電話番号確実につながる番号。請求時開示の運用も可
5メールアドレス問い合わせ受付用。ドメインを持っている場合は独自ドメイン推奨
6販売価格税込総額。商品ページ表示で代替可だが原則として明記
7商品代金以外の必要料金送料・手数料・梱包料など。「全国一律◯◯円」「無料」など明確に
8支払方法クレジットカード・銀行振込・コンビニ・後払いなど採用手段を列挙
9支払時期前払い・後払いの別、振込期限など
10引渡時期物販なら「入金確認後◯営業日以内」、デジタルなら「決済完了後即時」など
11返品・キャンセル条件・期間・送料負担を明記。記載漏れがあると法定返品制度が自動適用される

このうち「返品・キャンセル」の記載漏れは最もトラブルになりやすい項目です。返品を一切受け付けない方針であっても、その旨を表示していなければ、消費者は商品の引渡しを受けた日から8日以内であれば送料自己負担で返品できる扱いとなります(特商法第15条の3 第1項の法定返品制度)。これは訪問販売等のクーリング・オフとは別制度で、混同しがちですが要件・効果も別物です。「不良品以外は返品不可」など方針を持っているなら、必ず文言として書き出してください。

③ 個人事業主の悩みどころ──「請求時開示」プリセット

ひとりで事業を行う個人事業主・フリーランスにとって最大の不安は、自宅住所と個人の携帯電話番号を不特定多数に晒すことでしょう。販売ページや特商法表記から住所を辿られ、ストーカー・クレーマー対応に追われるリスクは現実に起きています。

法令上は、特商法第11条ただし書同施行規則第10条により、消費者から請求があれば遅滞なく書面または電子メールで提供できる体制を整えていることを条件に、サイト上の常時表記を省略できます(いわゆる「請求時開示」「省略表記」)。サイトには次のように書いておきます。

所在地:請求があった場合、遅滞なく開示いたします
電話番号:請求があった場合、遅滞なく開示いたします
お問い合わせ先:info@example.com(48時間以内に返信)

ポイントは「遅滞なく」の解釈です。消費者庁ガイドラインの感覚では翌営業日〜数日以内がライン。週単位で放置したり、そもそも開示請求を断ったりすれば、省略表記の前提が崩れて表示義務違反として扱われ得ます。問い合わせ窓口を1日1回は確認できる運用にしておいてください。

バーチャルオフィスとの併用

請求時開示と並行してよく使われるのが、バーチャルオフィスの契約です。月額1,000〜5,000円程度で、東京都心などの事業所住所をWeb掲載用に利用できます。バーチャルオフィス比較ガイドに料金体系と特商法対応サービスの選び方をまとめています。住所だけでなく電話転送・郵便転送も含めて月額契約することで、サイト上で常時公開できる連絡先を確保するのが、個人事業主の現実解です。

④ デジタル商材・サブスクの追加注意点

物販ECに比べて、デジタル商材やサブスクには通信販売特有の追加項目があります。漏らすと「重要事項の表示義務違反」として行政指導の対象になります。

動作環境・推奨ブラウザの明示

オンライン講座・SaaS・電子書籍・動画教材を販売する場合、動作環境を書いていないと「自分の環境で動かなかったから返金してほしい」というクレームに対抗しづらくなります。サポート対象は具体的に書きましょう。たとえば「Microsoft Edge / Google Chrome / Mozilla Firefox / Safari の各最新版で動作確認済み」「スマートフォンは iOS 17 以降 / Android 13 以降の Safari・Chrome 最新版」といった粒度です。古いガイドではよく「Internet Explorer 非対応」と書かれていますが、IE はすでにサポート終了済みのため、2026年時点では言及する意味がありません。

自動更新・解約方法(サブスク特有)

月額・年額のサブスクリプションは、2022年6月施行の改正特商法で「最終確認画面表示義務」が課されました。申込ボタン直前に、契約期間・各回の支払額・総額・自動更新の有無・解約方法をまとめて再表示する必要があります。

  • 契約期間(例:初回12か月、以降1か月ごと自動更新)
  • 各回の支払金額と支払時期
  • 解約方法(マイページから即時/メール連絡が必要、など)
  • 解約の効力発生時期(次回更新日まで有効/即時停止)
  • 無料トライアル後に有料化する場合、その日付と料金

ステマ規制(2023年10月施行)との関係

特商法表記とは別に、景品表示法のステマ規制(同法第5条第3号の指定告示)にも注意が必要です。アフィリエイト・タイアップ・PR投稿を含むページでは「広告」「PR」「プロモーション」等の明示が必要で、運用上の原則は「広告に該当する記事ごと・該当箇所ごとに、消費者が一見してわかる位置に表示する」こと。サイト全体ポリシーとしてフッターや特商法表記ページの隅に一文添えるだけでは不十分とされ、行政指導の事例でもこの点が繰り返し指摘されています。アフィリリンクを置く記事には、冒頭または該当リンク近傍に「【広告】」「【PR】」を入れる運用に揃えてください。

⑤ 書く順序・実例文

ここまでの内容を踏まえ、業態別のミニマム実例を示します。実際の記載は自社の運用に合わせて調整してください。

例1:物販EC(個人事業主・請求時開示運用)

販売事業者:山田 太郎(屋号:YAMADA STORE)
運営統括責任者:山田 太郎
所在地:請求があった場合、遅滞なく開示いたします
電話番号:請求があった場合、遅滞なく開示いたします
メールアドレス:info@example.com
販売価格:各商品ページに表示の金額(税込)
商品代金以外の必要料金:送料 全国一律 660円(税込)、北海道・沖縄 1,320円
支払方法:クレジットカード、銀行振込、コンビニ後払い
支払時期:クレジットカードは注文確定時、銀行振込はご注文から7日以内
引渡時期:ご入金確認後、3営業日以内に発送
返品・キャンセル:商品到着後7日以内、未開封・未使用に限り返品可(送料お客様負担)。
食品・受注生産品は返品不可とさせていただきます。

例2:デジタルダウンロード商材(テンプレート販売)

販売事業者:株式会社サンプル
運営統括責任者:佐藤 花子
所在地:東京都渋谷区◯◯1-2-3
電話番号:03-1234-5678(平日10:00〜17:00)
メールアドレス:support@example.com
販売価格:各商品ページに表示の金額(税込)
商品代金以外の必要料金:なし(ダウンロード通信費はお客様負担)
支払方法:クレジットカード(Visa / Master / JCB / Amex)
支払時期:注文確定時
引渡時期:決済完了後、ダウンロードURLを即時メール送付
動作環境:Edge / Chrome / Firefox / Safari の各最新版、Microsoft Excel 2019 以降
返品・キャンセル:商品の性質上、決済完了後の返品・キャンセルは承りません。
ファイルが破損していた等の不備は、決済日から7日以内にご連絡ください。

例3:オンライン講座・サブスク(月額会員制コミュニティ)

販売事業者:株式会社サンプル
運営統括責任者:佐藤 花子
所在地:東京都渋谷区◯◯1-2-3
メールアドレス:support@example.com
販売価格:月額 4,400円(税込)/ 年額 44,000円(税込)
商品代金以外の必要料金:なし
支払方法:クレジットカード
支払時期:初回登録時、以降は毎月の更新日に自動課金
引渡時期:決済完了後、即時に会員ページのアクセス権を付与
契約期間と自動更新:1か月ごと自動更新(年額プランは1年ごと)。
解約方法:マイページの「契約管理」より、次回更新日の前日までにお手続きください。
解約の効力:次回更新日に有効。日割り返金は行いません。
返品・キャンセル:デジタルサービスの性質上、決済済の料金は返金できません。

⑥ どこに掲載するか

特商法表記は「消費者が容易に到達できる場所」に掲載することが求められます。実務上は次の3か所すべてに導線を作るのが安全です。

  • 全ページ共通フッター:必須。リンクテキストは「特定商取引法に基づく表記」とする(「特商法」だけの略称は不可)
  • 購入ボタン直前:申込フォーム・カート画面のチェックアウトボタン付近にもリンクを設置
  • マイページ・契約管理画面:継続課金のサブスクでは特に重要

BASE・STORES・Shopify・Stripe Payment Links・note・Brain など、主要なカート系SaaSには特商法表記の専用入力欄があります。プラットフォーム側のテンプレートに沿って入力すれば、フッター表示まで自動で行われます。WordPressで自作する場合は固定ページとして作成し、フッターウィジェットからリンクします。

設立直後の整備順序については設立後やることチェックリスト、契約まわりの全体像は業務委託契約書の書き方ガイドもあわせてご覧ください。

⑦ 当サイトの「特商法表記ジェネレーター」を使う手順

個人事業主・小規模法人が手作業で11項目を整えるのは、抜け漏れのリスクが高い作業です。Toolbox Portalの「特商法表記ジェネレーター」は、事業形態を選んで必要情報を入力するだけで、必須項目を満たした表記文を3形式で出力します。入力したデータは外部サーバーに送信されず、ブラウザ内だけで生成されるため、住所・電話番号などのセンシティブな情報を扱っても安全です。

  1. 事業形態のプリセットを選択(物販EC/デジタルダウンロード/サブスク/オンライン講座/その他サービスの5種類)
  2. 事業者情報(商号・責任者・所在地・連絡先)を入力。請求時開示モードに切替可
  3. 価格・送料・支払方法・引渡時期・返品条件を入力(プリセットの初期値あり)
  4. サブスク・デジタル商材を選んだ場合は、追加項目(自動更新・解約方法・動作環境)も入力
  5. 出力形式を選択:HTML(WordPress固定ページ用)/Markdown(note・GitHub Pages用)/プレーンテキスト(カートSaaS入力欄用)
  6. コピーまたはダウンロードして、サイトに貼り付け

複数の事業を並行して立ち上げる場合でも、プリセットを切り替えるだけで業態別の表記を量産できます。ブラウザ完結・データ外部送信なしなので、税理士・行政書士に共有する前のドラフトづくりにも安心して使えます。

開業まわりの書類づくりでは、プライバシーポリシー生成ツールもあわせて使うと、特商法表記・プラポリ・利用規約のうち最低限の2本を一気に整備できます。プライバシーポリシーに盛り込む条文(GA4・アフィリエイト・ステマ規制対応など)の考え方は、プライバシーポリシーの作り方 2026で詳しく解説しています。会社設立そのものの段取りは会社設立ロードマップに流れをまとめています。

よくある質問(FAQ)

Q. 特定商取引法に基づく表記は、どんな事業に必要ですか?

インターネット・電話・郵便などで申込を受け、消費者に商品・役務を販売する「通信販売」を行う事業者すべてに必要です。物販ECに限らず、オンライン講座、デジタル教材、月額サブスク、コーチング、デザイン制作の販売ページなども対象になります。BtoB限定であっても、申込フォームに事業者証明の確認手段がない場合は消費者契約として扱われる可能性があるため、表記を備えるのが安全です。

Q. 自宅住所と個人の電話番号を、本当にWebサイトに公開しなければいけませんか?

原則は表示義務がありますが、特商法第11条ただし書・同施行規則第10条により「請求があれば遅滞なく書面または電子メールで開示する」運用(請求時開示)が認められています。サイト上には「お申込みいただいた方には請求に応じ遅滞なく開示します」と明記し、問い合わせ手段(メール・フォーム)を用意しておけば、住所・電話番号の常時掲載を省略できます。バーチャルオフィス契約で常時公開する事業所住所を確保するのも実務上よく使われる方法です。

Q. デジタル商材やサブスクで、特に注意すべき記載項目はありますか?

動作環境(推奨ブラウザ・OS)、自動更新の有無と更新タイミング、解約方法と解約の効力発生時期、ダウンロード型商材であれば返品不可の条件などを、消費者が誤認しない形で明記する必要があります。2022年6月施行の改正特商法では「定期購入の最終確認画面表示」も義務化されており、申込ボタン直前に契約期間・総額・解約条件を再表示することが求められます。

Q. 当サイトの特商法表記ジェネレーターを使うと、何が出力されますか?

事業形態(物販EC/デジタルダウンロード/サブスク/オンライン講座/その他サービス)を選び、事業者情報・価格・返品条件などを入力すると、必須11項目を満たしたHTML・Markdown・プレーンテキストの3形式で表記文を出力します。ブラウザ内だけで生成され、入力内容は外部サーバーへ送信されません。WordPress固定ページやカートシステムの特商法設定欄にそのまま貼り付けられます。

Q. 表記を怠った場合、どんな罰則がありますか?

消費者庁または都道府県知事から、業務改善指示・業務停止命令・業務禁止命令が出される可能性があります。指示・命令に違反した場合は、個人は3年以下の懲役又は300万円以下の罰金(併科可)、法人は両罰規定により業務停止命令違反等(第70条第3号)で最大3億円以下、不実告知・重要事項不告知・威迫困惑・電子メール広告不実表示等(第70条第1号・第2号)で最大1億円以下の罰金(特商法第74条)等の刑事罰が定められています。実務的にはまず「不実告知」や「重要事項の表示義務違反」として行政指導が入ることが多く、決済代行アカウントの凍結やモール出店停止に直結するため、罰金より先に事業が止まるダメージのほうが大きいのが実情です。

Q. 一度作った表記は、いつ見直せばよいですか?

事業内容・料金・支払方法・返品条件のいずれかを変更したとき、所在地や代表者を変更したとき、新しい商材カテゴリを追加したとき、そして特商法そのものの改正があったとき(直近では2022年6月の定期購入規制強化、2023年10月の景表法ステマ規制施行)に見直しが必要です。最低でも年1回、決算前後の棚卸しに合わせてレビューする運用にしておくと取りこぼしません。